stay home <追悼:益川敏英先生>

2020年突然やってきたコロナウイルス(WHOによる正式名「COVID-19(coronavirus disease 2019)」)により、日常生活は大きく変化しました。
 COVID-19:国立感染症研究所より
上の写真は新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真像。 粒状の粒子の上にコロナウイルス特有の冠状のスパイクタンパク質が観察できます。

緊急事態宣言が出され、人との接触を少なくするため「stayhome」が呼びかけられました。
私の仕事の形態は以前より在宅勤務が基本でしたので、それにより特段の影響はなかったのですが、外出できない⇒本屋に行けない、は大きかったです。
はい、活字中毒者の私としては・・・

昔の本でも読むかと引っ張り出してきた中に「現代の物質観とアインシュタインの夢」(著者:益川敏英先生)がありました。
京都大学理学部教授であった益川敏英先生が書かれた本になります。(岩波 科学ライブラリー32)
奥付は1995年10月23日ですので、2008年ノーベル物理学賞を受賞する8年前の著書です。

1973年に「3世代のクォークを導入することで、CP対称性の破れを自然に説明できる」ことを示しました。
当時はまだ第2世代のもう一つのクォーク(3つ目)であるチャーム(c)クォークも見つかっていないときでしたから、クォークは6つと予言したのですから、小林・益川理論の予言は驚くべきものであったと思われます。
しかし、1974年にはチャームクォークが、1977年にはボトム(b)クォークが見つかり、最後まで残ったトップ(t)クォークも1995年に発見されて、3世代クォークの素粒子模型(理論)は確立されました。
クオークの種類【アップ(u)、ダウン(d)、ストレンジ(s)、チャーム(c)、ボトム(b)、トップ(t)】です。
2008年にノーベル賞が決まった時、益川先生は「(受賞は)大してうれしくない・36年前の過去の仕事ですから」「研究者仲間が理論を実験し、あれで正解だったよ、と言ってくれるのが一番うれしい」と、
「我々は科学をやっているのであってノーベル賞を目標にやってきたのではない」から、と淡々とおっしゃったようで、一科学者として素晴らしいお人柄と推察されます。 (このお言葉、感涙ボロボロものです)

ノーベル賞は「小林・益川」理論と呼ばれ日本語でもそのように表記されますが、物理学の英語論文ではローマ字順表記が慣習になっていますので、研究主体だったと思われる益川先生の名前が後ろになっています。
これは慣習ですからしょうがないのでしょうが、日本的感覚で言うならちょっと違和感がありますね。
CP.Violation in the Renormalizahle Theory of Weak Interaction Makoto KOBAYASHI and Toshihide MASKAWA Department of Physics, Kyoto University, Kyoto
小林先生も益川先生とともに研究なさって「CP対象性の破れ」の論文を書かれていますので業績を否定するわけではありませんので念のため。

 小林先生(左)と益川先生:高エネルギー加速器研究機構HPより

それはともかく、なぜか私の手元にあった(理論物理学を学んだわけでない私が持っているのか?)「現代の物質観とアインシュタインの夢」は、購入当初、読みこなせなかった本になります。
まぁstayhomeだし、読んでみるかと思いましたがやっぱり読めない。
参考書として立花隆氏の「小林・益川理論の証明」(2009年朝日新聞出版)なる本を引っ張り出してきましたが、やっぱり読み切れない。

下に引用した京都大学での対談で
これからの若者に【実際に研究をしていると、本筋とは違う、意に沿わないことをしなければならないこともままありますが、そんな苦しい状況でも自分の目標を見失わず、常に高いところに目標を持ち続けて、実験など実作業は地道に積み重ねる努力を続けることが重要です。あと、友人や先輩などと自由に議論を交わすことも大切ですね。】と述べられています。

益川先生は超非凡な能力をお持ちであり、私は言葉は似ているが非凡とは真反対にいる平凡な能力しかない人間だったことを再確認。 うむ、残念。

番外編 益川 敏英 名誉教授
番外編 益川 敏英 名誉教授

益川先生ご逝去2021.7.29日追記
つい先ほどNHKのニュース速報で、益川敏英先生がお亡くなりになったとの報が流れました。
まだ81歳と次の研究のできるお年でしたのに。
ご冥福をお祈り申し上げます。 日本の大きな損失です。

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